AI検索が主流になると小中学生の探究学習はどう変わるか

中学受験とテクノロジー

ChatGPTを始めとするAIの進化は凄まじく、AI技術の普及によって小中学生の学習方法も大きく変わりつつあります。最新の調査によれば、中学生の生成AI利用率は13.3%に達し、親の利用率9.0%を上回っており、この1年で倍増したというデータもあります。

これまで、長女の中学受験に向けた学校選びということでいくつも私立中学校の説明会に行くとよく耳にするキーワードとして「探究学習」という話を聞くケースがありました。「我が校の教育の特徴は探究学習に力を入れています。」という話はよく校長先生が話している記憶があります。

けど、「最近AIが普及してきて、AIに聞けば全部教えてくれるから、そもそも探究する必要もなくなってくるんじゃないの。」と、そもそも論を語りそうになってしまう私がいたので、AIが今後普及していった場合、小中学生の探究学習がどのように変わるのかについて考えて見ました。

AI時代における探究学習の位置づけ

まず「探究学習」とは何かという話ですが、

「探究学習」とは自分で問いや課題を見つけ、その課題解決に向けて情報を収集・整理しながら、他者と議論・協力し、時には振り返りながら、自分独自の最適な答えを見つけていく学びのこと

を指します。

この学習方法の特徴は、与えられた知識を暗記するのではなく、主体的に学びを深めていくプロセスを重視する点にあります。2019年の学習指導要領の改訂以降、アクティブラーニング(主体的で深い学び)が推奨されるようになり、その中核的な学習方法として探究学習が様々な教育機関に導入されてきました。

小学校では「総合的な学習の時間」を活用して、子どもたちが自ら課題を設定し、情報収集や整理を行いながら解決策を探るプロセスを体験しています。いわゆる「調べ学習ですね。」

簡単に言えば、教科書に書いてある内容を理解したり問題を解いたりというどちらかというと受け身の学習ではなくて、自分の興味のあるなどをテーマなどにして、自分で主体的に行動をしながら学んでいく学習スタイルということですね。

小中学生が1人1台タブレット端末を持ち、タブレットを使った「調べ学習」をしている姿は、今では当たり前の光景ですが、ほんの数年前では考えられなかったことだと思います。我が家の娘もipadのSiriに向かって話しかけていたり、子供の適用能力の高さに親はびっくりするばかりです。

今後AIがどんどん普及していくと、言われたとおりに作業を行う仕事はAIが代替するようになると予測されています。このような時代になると、「どんな問いを立てるか」「どのように情報を吟味し、新しい価値を創造するか」といった能力は人間にしかできない領域として、ますます重要性を増していくと思われます。

AI検索を使えば簡単に欲しい情報が整理されて入手できる時代がもうやってきています。そうなってくると、暗記に膨大な時間を割くよりも、得られた情報をどう組み合わせて新しいアイデアに発展させるかという「問題解決力」や「コラボレーション力」といった力が必要になってくるので、そういった力を育む方向に私立中学校の取り組みもシフトいくことになると思います。

AIが探究学習にもたらす具体的な変化

探究学習のテーマ出しに生成AIを活用

AIは現時点でもすでに探究学習の各段階において色々な変化をもたらしています。その中でも大きな変化の一つは、探究テーマ設定のプロセスにAIが活用され始めているという点は驚きです。

株式会社マイパレが2025年4月から提供開始予定の「マイパレ for school」というサービスは、生成AIを活用して生徒の探究学習を支援するアプリで、生徒一人ひとりが自身の興味を引き出すキーワードを選定し、それに基づいた独自のテーマや問いを立案するプロセスをサポートしてくれるサービスです。

従来は生徒が自力でテーマを考え出さなければならず、そこで躓くケースもあると思いますが、テーマの設定自体にそもそもAIを活用するという点は大きな変化になりそうですね。

私はIT業界で働いていますが、ビジネス領域だと「◯◯の案を5つ提案して」のようにChatGPTに質問してアイデア出しのヒントや叩きなどに活用している話はよく聞きますが、探究テーマのアイデア出しにも確かに使えそうだなとは思いました。

AIを使うと情報収集の幅も質も向上

ChatGPTなど生成AIを使ったことがある方ならピンとくると思いますが、情報収集の段階においても、AI検索は劇的な変化をもたらしています。

これまではGoogleなどの検索サイトで「りんご 剥き方 簡単」のように、知りたい情報を得るために、単語を区切って検索する必要がありましたが、生成AIの登場により「りんごの簡単な剥き方」という文章で質問すれば答えが返ってくる時代になりました。すごい時代ですよね。

そうなってくるとどうなるかというと、これまでは検索に慣れていなかった小中学生でも必要な情報を効率よく得られるようになってきます。そうなると、探究学習をする中での情報収集の幅が広がり、質も向上していくでしょう。

音声入力もできる時代なので「◯◯について教えて」とか「◯◯ってどうなの」という口頭でも情報が得られますので、知りたい情報を直感的にすぐに入手できる時代が来たということです。繰り返しですが、本当にすごい時代です。

探究学習のフィードバックにもAIを活用

さらに、探究活動中に大事なフィードバックにもAIが登場して来ます。

探究学習はある程度時間をかけて継続的に進めていくものののため、この方向で良いのかや、この課題設定や取り組み方でいいのかなどは、定期的に第三者がフィードバックしてある必要があります。私立中学校だと半年や1年かけて1つのテーマを取り上げ、期末などに発表したりする学校も多いと思います。

探究学習のフィードバックを誰がするかといえば当然、学校の先生ですね。ただ、先生も一人ひとりの生徒に対して十分な時間を割いてフィードバックを行うことは現実的に難しい状況です。よくニュースにも出てますが、先生が忙しいという話は実際に先生を見ているとわかりますよね。

そこで登場してきたのがAIです。例えば、株式会社Study Valleyが開発したTimeTact探究ロボは、探究学習のステップである「課題設定」「情報収集」「整理分析」「まとめ表現」のすべての過程で10秒以内にフィードバックを提供するというサービスを提供している会社もあります。

こういった特定の会社のサービスでなくとも、ChatGPTに探究学習で作った資料を読み込ませてフィードバックしてと言えば、フィードバックもしてくれそうですし、これまで生成が担っていた作業を生成AIが代替する時代がやってきていると言えます。

生成AIのフィードバックを活用すれば、探究学習の質も向上し、先生の負担も軽減されるという流れになっていくといいですね。

AI活用による探究学習の効果と実践事例

AI活用による探究学習の効果は、様々な実践事例から明らかになってきています。例えば、ナイジェリアで実施された教育プログラムでは、生成AIをチューターとして活用することで「6週間で2年分の学習成果に相当する伸び」という驚くべき結果が報告されました。この成果は、生徒それぞれのペースに合わせた学習が可能になり、分からない部分をすぐに質問できる環境が整ったことで達成されたものです。この事例は、AIが個別学習を強力にサポートすることの効果を示しています。

日本国内でも、AI活用による探究学習の実践が進んでいます。マイパレ for schoolのプロトタイプ版は約2,000名の生徒が体験し、論文検索の補助や今後のアクションプランの提案など、現場のニーズに合わせた機能が実証されています。この実証実験の結果、生徒は自ら疑問を持ち、気づきを得るプロセスを大切にしながらも、効率的に探究活動を進められることが確認されました。

埼玉県さいたま市岩槻区にある開智小学校では、週1時間の「探究」の授業が設けられており、1年間かけてそれぞれのテーマをもとに「探究学習」を行い、年度末の発表会でプレゼンテーションを行うという取り組みが実施されています。こうした既存の探究学習の枠組みにAI技術を導入することで、テーマ設定や情報収集、分析のプロセスがより充実し、探究の質が高まることが期待されています。

また、TimeTactを提供する株式会社Study Valleyは、これまで400校以上の探究学習を支援してきた実績を持ち、その知見を生かして探究学習に特化した生成AIを開発しました。このシステムは、一般的な生成AIでは「一般的すぎて探究の参考にならない」「回答が難しすぎる」「内容が誤っている」といった課題を解決し、探究学習の特性に合わせたフィードバックを提供できる設計になっています。

AI時代の探究学習における課題と教育者の役割

AI検索が主流化する中で探究学習を効果的に進めるためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。最も重要な課題の一つは、AIに対する適切な依存度の設定です。生成AIが答えを簡単に出せることで、生徒が「考えずに答えを得るだけ」になる危険性があります。教育現場では、AIを活用しながらも、生徒自身の思考プロセスを大切にする工夫が求められています。AIリテラシー教育を通じて、生徒がAIの特性や限界を理解し、適切に活用する能力を養うことが重要です。

また、AIを活用した教育の長期的な効果についても検証が必要です。ナイジェリアの事例のような短期的な効果が確認されていますが、「半年後や1年後にこの成績向上が維持されるのかはまだ不明」という指摘もあります。探究学習の本質は、継続的に自ら学ぶ態度や能力を育むことにあるため、AI活用による効果が一過性ではない持続的なものになるかどうかの検証が求められています。

さらに、教育格差の問題も考慮する必要があります。インターネット環境やデジタル機器の普及率による格差が、教育機会の不平等を生む可能性があるため、地域間の格差解消が求められています。また、教師のデジタルスキル向上も課題です。デジタル教育の普及に伴い、教師が新たな技術を使いこなすための研修やスキル向上が重要になっています。

こうした課題に対応する中で、教育者の役割も大きく変化しています。教師は単に知識を伝える存在から、生徒の学びを促し、創造性を育むファシリテーターへとその役割を変化させています。AI検索が情報収集や基礎的な分析を担う中で、教師は生徒の探究プロセスをガイドし、多様な視点からの思考を促すことに集中できるようになります。AI技術の支援により、教師はより創造的な活動に集中できるようになり、生徒一人ひとりと深く関わる時間が増えることが期待されています。

未来を見据えた探究学習の発展方向

AI検索が主流化する未来において、探究学習はどのように発展していくのでしょうか。まず、探究学習の目的そのものが「知識獲得」から「創造的問題解決能力の育成」へとさらにシフトしていくと考えられます。AIが大量の情報を瞬時に処理・提供できる時代においては、情報を得ることよりも、その情報をどう活用し、新たな価値を創造するかという能力がより重要になります。

また、探究学習のプロセスもより効率化・個別最適化されるでしょう。「マイパレ for school」やTimeTactのような探究学習支援システムがさらに進化し、生徒一人ひとりの興味関心や学習スタイルに合わせたカスタマイズされた探究プロセスを提供できるようになります。これにより、全ての生徒が自分のペースで、自分の関心に沿った深い探究活動に取り組めるようになるのです。

さらに、探究学習の評価方法も変化していくでしょう。AIの支援により、探究プロセス全体を通した学びの足跡が詳細に記録・分析できるようになり、最終成果物だけでなく、探究過程における思考の深まりや変化も評価対象になっていくと予想されます。これにより、より公平で多面的な評価が可能になるとともに、生徒自身も自己の学びを振り返る機会が増えることで、メタ認知能力の向上にもつながるでしょう。

結論:AIと共に進化する小中学生の探究学習

AI検索の主流化は、小中学生の探究学習に革命的な変化をもたらしています。情報収集の効率化や個別最適化されたフィードバック、進捗管理の可視化など、探究学習の各段階でAI技術の恩恵を受けることが可能になっています。しかし、こうした変化の中でも、探究学習の本質である「自ら問いを立て、考え、解決策を見出す」というプロセスの重要性は変わりません。むしろAI時代だからこそ、AI検索で得られる情報をどう活用し、クリエイティブな発想で課題解決に結びつけるかという「人間ならではの思考力」が一層重要になるのです。

教育現場では、AI技術を単なる便利なツールとしてではなく、探究学習を深化させるパートナーとして活用することが求められています。AIが情報収集や基礎的な分析を担い、教師が生徒の創造的思考やコミュニケーション能力の育成に注力するという新しい教育のあり方が形作られつつあります。このようなAIと人間の協働による新しい探究学習のモデルを確立することで、変化の激しい未来社会を生き抜く力を持った子どもたちを育成することができるでしょう。

AI検索が主流化する時代において、探究学習は単なる学習方法の一つではなく、未来を生きる子どもたちに必要不可欠な思考力と行動力を育む中核的な教育手法として、ますますその重要性を増していくことでしょう。私たち教育に関わる者は、AI技術の可能性を最大限に活かしながら、子どもたち一人ひとりの探究心を育む環境づくりに取り組んでいく必要があります。